福翁自伝

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

引用

仮初にも愚痴を言わず

・・私の眼には世間が可笑しく見える、世間多数の人がややもすれば貧乏で困る、金が不自由だ、無力だ、不如意だ、なんかんと愚痴をこぼすのは、あるいは金を貸して貰いたいというような意味で言うのか、但しは洒落に言うのか、飾りにいうのか、私の眼からみれば何のことか少しも訳がわからない、自分の身に金があろうとなかろうと敢えて他人に関係したことではない、自分一身の利害を下らなく人に語るのは独り言を言うようなもので、こんな馬鹿げたことはない、私の流儀にすれば金がなければ使わない、有っても無駄に使わない、多く使うも、少なく使うも、一切世間の人のお世話に相成らぬ、使いたくなければ使わぬ、使いたければ使う、嘗て人に相談しようとも思わなければ、人にくちばしは容れさせようとも思わぬ、貧富苦楽に独立独歩、ドンなことがあっても、一寸でも困ったなんて泣き言を言わずに何時も悠々としているから、凡俗世界ではその様子をみて、コリャ何でも金持ちだと推量する人もありましょう。ところが私はまた、その推量があたろうともあたるまいと、少しも頓着なしに相変わらず悠々としています。

数年前に購入したもの。折り線がしてあったので読み返してみた。
福沢諭吉の自伝。お金に限らず精神が独立している。尊敬する。精神もカラリとしている。福沢には及ばないが少しでも見習いたい。この人は、独立した人だから、他人の助言もいらないんだって。自尊信ってやつね。